
2025年現在、退職代行サービスは多くの人に知られる存在となり、企業や個人事業主の参入が相次いでいます。しかし、「退職代行」と検索すると、「クズ」や「頭おかしい」といったネガティブなワードが目立ち、利用をためらう方も少なくありません。
「退職の意思を代わりに伝える」というサービス内容には、どこかマイナスの印象がつきまといがちですが、実際は時代のニーズに応えた新たな選択肢と言えます。
この記事では、退職代行サービスに否定的な意見が生まれる背景や、「違法性はあるのか」といった疑問について詳しく解説します。
退職代行は「何を求めるか」で選ぶ
退職代行はダメじゃない!マイナス意見は日本人特有?

日本人は、”日本人らしさ”として「義理人情」を大切にする文化が根強くあるため、社会での責任を重視する価値観が非常に強い傾向にあると考えます。
だからこそ、退職代行サービスのある意味で「不義理」とも受け取られる行為には、批判的な声が出やすいのはごく自然なことと言えます。
退職を申し出るのは、社会的な義務が絡んでいるため、代行サービスを使うことに対して違和感がある人も多いでしょう。一方で、退職代行サービスを利用する方々は職場でのストレスや心身の不調などで、やむを得ずその選択をする場合がほとんどです。
自分の健康や心の平穏を守るための行動を、一律に「良くない」と否定するのではなく、現代社会では柔軟に受け止めることが求められます。
退職代行が普及した背景は「時代の変化とメディア露出」
退職代行サービスの人気が急速に高まっている背景を見てみましょう。
主に
- 職場環境の変化
- 働き方の多様化
- ストレスの増加
といった時代的な変化が挙げられます。具体的には、
転職するのが当たり前!「今の会社が合わない」と思ったとき、もっと良い労働環境や業務内容を求めて即座に転職を検討しました
SNSで「ブラック企業は早めに辞めるべき」という投稿を見て辞めたくなった
退職代行サービスの体験談を読んで、依頼するハードルが下がった
など、いくつかの要因が組み合わさることで退職代行サービスの需要が高まっています。
さらに、昨年2024年の4月頃から「退職代行サービス」がメディアで多く取り上げられ、認知度の拡大に寄与したと考えられます。
以下の「退職代行」「退職代行サービス」のGoogle検索数の推移からも、2024年の4〜5月にかけて検索数が大きく増加していることがわかります。
令和の時代になり「コンプライアンス」を重視する企業が増えている印象を受けますが、退職代行モームリが公開したデータによると、実際には形だけにとどまっているケースも少なくないようです。
退職代行の依頼者に関しては、暴力を伴う重いハラスメントも多く、自分で言いたくても言えないような過酷な状況に立たされている方もいらっしゃいます。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000103965.html
退職代行サービスは、多くの悩める社会人にとって、最後の頼みの綱となっている場合があることを理解しておきましょう。
退職代行は「合法」なのか「違法」なのか
そんな時代背景に即した画期的なサービスである退職代行サービスですが、ニーズや認知度が急速に広まるなか、「安心して利用できるのか?」といったリスクやデメリットが気になりますよね。
ここでは、退職代行サービスを利用して退職することは合法なのか、また、どのような業者を選択するべきなのか見ていきましょう。
退職代行サービスは合法です
結論、退職代行の利用やサービスそのものは合法です。ただし、退職代行業者の行為が違法行為に該当する可能性はあります。
具体的には、弁護士法72条(弁護士でない者が報酬を目的として法律業務を行うことを禁止)に抵触するかどうかが問題となります。
違法行為に当たるかどうかの見極め方としては、
- 退職代行業者に顧問弁護士がいるか
- 弁護士がどの程度関与しているか
- 運営主体が労働組合か一般企業か
- 提供するサービスの内容
などが挙げられます。
有給や給与の交渉を代理で行う行為は法律業務に該当するため、弁護士資格を持たない者が行うと非弁行為に該当します。そのため、弁護士資格を持たない者が対応できるのは、『依頼者の意思を伝える』までに限られます。
意思伝達の例
「○○さんは退職したいと考えています。退職日は○月○日を希望しています。」と会社に伝える。
代理行為の例
「○○さんの未払い残業代を請求します。計算によると○○円なので支払いを○○日までに給与口座へ振り込んでください。」と会社に交渉する。
業者を選ぶ際に以下の表を活用ください。
業務内容 | 退職代行サービスの運営者 | ||
---|---|---|---|
民間企業 | 労働組合 | 弁護士 | |
退職意思を伝える | ◯ | ◯ | ◯ |
退職条件を交渉する | × | ◯ | ◯ |
有給取得を交渉する | × | ◯ | ◯ |
給与支払いを交渉する | × | ◯ | ◯ |
離職票等を請求する | × | ◯ | ◯ |
裁判に対応する | × | × | ◯ |
退職代行サービスでは、退職の意思を伝えるだけでなく、有給休暇の取得や未払い残業代の請求まで行う代理行為を行う業者も多く存在します。
退職の意思を伝えること自体は非弁行為には当たりませんが、交渉や請求を行うことは非弁行為に該当する可能性があります。
大手の退職代行業者では顧問弁護士監修のもと、非弁行為を避けるための対策を講じているため、介入できる部分の線引きを徹底しています。
未払い賃金の請求や慰謝料の請求などの法律行為に該当する業務は、弁護士や顧問弁護士に対応してもらえるサービスを利用すれば、退職者本人が過度に心配する必要はないでしょう。
退職希望者の状況はさまざまですので、まずは無料相談を利用して、ご自身の場合どこまで対応してもらえるのか確認することをおすすめします。
民間企業が労働組合と「提携」することで「交渉可能」としている退職代行サービスも増えていますが、非弁行為に該当する可能性があるとも言われています。
ここについては現時点で見解が分かれているため、不安がある方は、「労働組合運営」か「弁護士運営」の退職代行サービスを利用するとより安心です。
退職代行サービスの最大のメリットは「心理的ストレスの低減」
退職代行に期待できるメリットは、下記のとおりです。
- 心理的ストレスを減らして退職できる
- 退職を引き止められたり、理由を聞かれたりすることを避けられる
- 弁護士に依頼をすることで未払いの給与や慰謝料請求もできる
心理的ストレスを減らして退職できる
一般的に、退職する際は上司に意思を伝え、会社と話し合いながら手続きを進めていきます。しかし、退職の話がスムーズに進まなかったり、パワハラのような発言を受けたりすることもあり、心理的な負担を感じるケースも少なくありません。
その点、退職代行を利用すれば、退職の意思や有休消化の希望を第三者が代わりに伝えてくれるため、余計なストレスを抱えることなく退職手続きを進めることができます。
退職を引き留められたり、理由を聞かれたりすることを避けられる
自ら会社に退職の意向を伝る場合は、引き留められたり、理由を聞かれたりします。詳しい退職理由を伝えても納得してもらえず、結局退職できない可能性もあるでしょう。
退職代行であれば、本人との直接的なコミュニケーションがない分、会社側も引き留めるチャンスや意欲が減り、すんなりと退職できます。
弁護士に依頼をすることで未払いの給与や慰謝料請求もできる
弁護士が提供する退職代行サービスを利用すれば、トラブルが発生した際に法律に基づいて適切に対処してもらえるほか、未払いの給与や慰謝料の請求も可能です。
また、会社側も弁護士からの請求を受けることで法的措置を意識し、不当な引き止めを避けるため、手続きが滞りなく進む可能性が高まります。
退職代行サービスのデメリットは「退職するために費用が発生する」
退職代行は、自分で退職の意思を伝えずに退職できるのが魅力のサービスです。しかし、退職代行には下記のようなデメリットが伴います。
- 退職をするために費用が発生する
- 依頼先によっては交渉(未払いの給与や有休消化など)ができない
- 勤務先から直接連絡が来る場合がある
- 退職に必要な書類がすぐに送られてこないことがある
- 悪質な退職代行業者に依頼してしまう恐れがある
それぞれについて詳しく解説していきます。
退職をするために費用が発生する
退職代行を利用するには、一般的に3万円〜5万円程度かかります。サービスによって異なりますが、1万円以下など格安で利用できるサービスは少ないのが現状です。
依頼先によっては未払いの給与や有休消化の交渉ができない
未払いの給与や有休消化の交渉ができないケースもあります。民間企業が運営する退職代行サービスは、依頼者の退職意向を代わりに伝えることしかできません。
労働組合が運営する退職代行では、利用者は組合員として依頼するため、未払い給与や有給消化の交渉が「団体交渉」として認められます。また、弁護士が対応する場合も、依頼者の代理人として交渉が可能です。
しかし、労働組合関係でも弁護士運営でもない退職代行業者は、組合でないから団体交渉もできず、弁護士でないから個人の交渉を代理することもできません。
勤務先から直接連絡が来る場合がある
基本的に退職代行は、会社側には「利用者に直接連絡しないように」と依頼をします。しかし、強制力がないため、会社によってはサービス側からの連絡を無視して、直接連絡が来る可能性があります。一般的には、本当に退職の意思があるのかを確認するために連絡が来ますが、なかには嫌がらせ目的で連絡をしてくる会社もあるので注意が必要です。
※詳しくはこちら:【退職代行】会社の人が家に来る?対処法や回避法を解説
退職に必要な書類がすぐに送られてこないことがある
退職する際には、離職票や健康保険資格喪失証明書などが発行されます。基本的には、退職する際に発行してもらえますが、退職代行を利用すると必要な書類がすぐに送られてこないことがあります。
会社側が書類を郵送し忘れてしまうほかにも、退職者を困らせるため意図的に送らないケースも少なくありません。書類の手配などは、退職代行サービスの範囲外になる可能性もあり、自分で手配しなくてはならないケースもあるため、注意が必要です。
悪質な退職代行業者に依頼してしまう恐れがある
退職代行サービスには、悪質な業者も存在します。悪質な業者に依頼してしまうと、下記のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 会社側に対して嘘の退職理由を伝える
- 迷惑電話やメールが増える
- 費用を払った後に音信不通になる
このようなトラブルを防ぐには、しっかりとした対応をしてくれる退職代行業者に依頼することが大切です。公式Webサイトだけでなく、実際にサービスを利用した人の口コミ・評判なども参考にしましょう。
まとめ
退職代行サービスは、退職に伴う精神的な負担を軽減し、スムーズに退職するための有効な選択肢です。インターネットの情報を鵜呑みにせず自分にとって必要かどうかの軸で判断することをおすすめします。
退職は人生の大きな転機です。自分にとって最適な方法を選び、新しいステージへ向けて前向きに一歩を踏み出しましょう。

株式会社Amazia Link
LogsFix編集部
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