退職申請時のトラブル事例10選とトラブル回避のために「やってはいけないこと」を解説

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公開日:2024.10.22

退職を考えている方にとって、退職時のトラブルは避けたいものです。しかし、実際には自己都合退職や退職代行サービスの利用に際して、さまざまな問題が発生することがあります。

本記事では、退職申請時に起こり得るトラブル事例を詳しく紹介し、トラブルを未然に防ぐためのポイントについても解説します。

退職時に起こり得るトラブル事例10選【自己都合の退職】

厚生労働省の令和3年度の調査によると、総合労働相談コーナーに寄せられた相談内容のなかで、「退職」に関する相談は、「いじめや嫌がらせ」についで、2番目に多いとされています。

退職は労働者にとって重要な決断であり、円滑に進めたいものですが、実際にはさまざまなトラブルが発生することも多いのでしょう。

出典:厚生労働省 「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」より

退職時のトラブルを未然に防ぐために、具体的な事例の把握と、その対処法を理解しておきましょう!

事例1、会社に退職を引き止められる

退職を拒否され強い引き止めにあっています。就業規則では1ヶ月前に退職したい旨を伝えるとあったため1ヶ月前に伝え人手不足の為、退職願を受け取ってもらえず…
その後社長から『代わりが見つかるまで退職はさせない。もっと会社や全社員のことを考えろ。』と言われました。他にも、転職前のことを引き合いに出し不満をダラダラと言われ辞めさせてもらえません。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11304639296

このように退職を申し出た際に、人手不足などの状況を理由に、『このタイミングで退職するのは無責任だ』と、引き止めてくる会社もあります。

しかし、法律(民法第627条)では、期間の定めのない雇用(正社員)の場合、退職の申し出をしてから2週間で退職できる決まりになっています。さらに、労働者が退職の意思を示しているにもかかわらず、それを認めない行為は労働基準法第5条違反となり、処罰の対象となる可能性があります。

事例2、有給休暇を消化できない

今月末で退職することが正式に決定したのですが、退職が急だったとはいえ、有給消化を人手不足が理由でなかなか話が進みません。人の居る日ならいいんじゃないといった感じで後回しにされます。

https://oshiete.goo.ne.jp/qa/13709208.html

退職時に残っている有給休暇を消化しようとしても、会社側が認めないケースがあります。

しかし、この場合も事例1同様に労働者の権利を侵害する行為です。有給休暇の取得は労働基準法第39条で労働者の権利として定められています。

第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

会社には有給休暇を取得させる義務があり、これを拒否することは労働基準法違反となります。

事例3、退職金や給与を受け取れない

退職を理由に退職金や給与の支払いを拒否されるケースもあります。しかし、これも違法行為です。

労働基準法第24条では、すでに働いた賃金は必ず支払わなければならないと定めているため、会社側には「支払う義務」があるのです。

ただし、退職金の金額は、就業規則などで「自己都合退職の場合8割支給」など、定められているケースが存在します。退職を検討する際には、その規定を必ず確認しておきましょう。

事例4、懲戒解雇になる 

他社への転職を理由に退職を申しでたところ、その経緯から懲戒解雇にするといわれました。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1225311337?__ysp=6YCA6IG344KS5Lyd44GI44Gf44KJ44CA5oey5oiS6Kej6ZuH

懲戒解雇とは、会社が従業員との労働契約を一方的に解除できる処分のことです。これは最も重い制裁であり、退職金の不支給や減額、転職において不利になるなどのデメリットがあります。

懲戒解雇の対象となるのは、刑事犯罪、業務命令違反、ハラスメント(加害者)、無断欠勤、経歴詐称、機密漏えいなどであり、一般的な退職にはほとんど適用されません。

つまり、明らかに会社側に大きな不利益をもたらした場合に限られます。

事例5、会社から損害賠償請求をすると脅される

退職したいのですが、「在籍期間で営業成績(業績)が落ちた分をお前に損害賠償請求をする」と脅されています。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11306057456?__ysp=6YCA6IG344CA5pCN5a6z6LOg5YSf

退職時に会社から損害賠償を請求されたり、脅されたりするケースもあります。しかし、通常の退職であれば損害賠償請求の対象にはなりません。

損害賠償が請求される可能性が考えられるのは

  • 業務の引き継ぎを行わずに会社に損害を与えた
  • 機密情報を漏らして会社に損害を与えた
  • SNSなどで会社の名誉を傷つける発言をした
  • ハラスメントなど会社に大きな損害を与えるトラブルを起こした

などの場合です。

※こちらの記事もおすすめ:退職代行を利用すると訴えられる?損害賠償請求の対策方法も解

事例6、退職の手続きが進まない

上司に退職の意思を告げたにもかかわらず、そこから手続きが進まないケースがあります。このような場合、退職届を会社に正式に提出することが有効です。

上司が退職届を受け取ってくれない場合は、内容証明郵便(※)で郵送することも一つの方法です。これにより、退職の意思を客観的に証明できます。

退職の手続きが進まない場合でも、労働者には退職の権利があります。適切な方法で退職の意思を示すことが重要です。

内容証明 | 日本郵便株式会社

事例7、パワハラが原因なのに「自己都合退職」扱いにされる

パワハラで会社辞めました。 離職票が届いたのですが、自己都合退職になってました。会社のパワハラ窓口にも何度か相談してから退職届を書き、その退職理由にもパワハラでと書きました。 退職する際の書くように言われた書類に、会社からの退職理由に文句を言わないみたいなことが書かれた欄にサインしてしまったのを今思い出しました。 事務員に言われるまま「こことこことここにサインと判子を」と流れ作業みたいに書いてしまったことが悔やまれます。 今からではもう変更は難しいのでしょうか。

Yahoo!知恵袋

パワハラが原因で退職したのに、自己都合退職とされる悪質なケースがあります。本来、パワハラによる退職は「会社都合退職」ですが、会社側が不都合を避けるため、自己都合にしようとすることがあります。

このような状況に直面した場合、弁護士や弁護士運営の退職代行業者と連携を取ることをお勧めします。パワハラの証拠を集めるなど適切な手続きを行えば、正当な退職理由を主張できるでしょう。

事例8、転職先に連絡すると脅される

退職を申し出た際に、「転職先に悪評を流す」などと脅されるケースがあります。これは深刻な権利侵害であり、許されない行為です。

このような脅しは刑法上の脅迫罪や強要罪に該当する可能性があります。さらに、実際に転職先に悪評を流した場合、名誉毀損罪に問われる可能性もあります。脅しを受けた場合は、証拠を残し、必要に応じて警察や弁護士に相談することが重要です。

※こちらの記事もおすすめ:「ヤメハラが怖くて退職を伝えられない」を解決!

事例9、退職日を延期するよう説得を受ける

会社側の都合で退職日を延期するよう説得されるケースがあります。「後任が見つかるまで」「プロジェクトが終わるまで」などの理由を挙げられることがあります。

しかし、正社員などの無期雇用契約労働者の場合、2週間前までに退職を通知すれば、いつでも契約を解除して退職する権利があります。

会社側が退職日の延期を強要することは違法行為となる可能性があります。退職の意思を示した日から2週間後に退職できることを理解し、適切に対応することが重要です。

事例10、会社から離職票が届かない

退職後、会社から離職票が届かないというトラブルもよくある事例です。

通常、離職票は退職日から10日〜14日後(約2週間後)に届くとされています。

離職票は失業保険の受給手続きに必要な重要書類です。これが届かないと、失業保険の受給が遅れてしまう可能性があります。

離職票の交付は、労働基準法第22条及び雇用保険法第76条第3項で規定されている「会社の義務」のため、交付の拒否権はありません。離職票が届かない場合は、まず会社に確認し、それでも解決しない場合はハローワークに相談するのが良いでしょう。

トラブルを起こさないために「やってはいけない」こと

退職時のトラブルを回避するためには、事前の準備と適切な対応が不可欠です。以下では、トラブルを防ぐために「やってはいけないこと」を解説します。

繁忙期の退職は可能な限り避ける

退職のタイミングとして、会社の繁忙期は可能な限り避けると良いでしょう。これは、会社への配慮であると同時に、自身の円滑な退職のためでもあります。

繁忙期に退職を申し出ると、会社側の負担が大きくなり、退職の承認が得られにくくなる可能性があります。また、引き継ぎや残務処理に十分な時間を取ることが難しくなるため、結果として自身の評判を落としかねません。

引き継ぎ資料の作成や段取りをしておく

退職時のトラブルを防ぐうえで、引き継ぎ書の作成と段取りを整えておくことは非常に重要です。これは、会社への責任を果たすだけでなく、自身の評判を守るためにも必要な行動です。

適切な引き継ぎ資料を作成することで、後任者が滞りなく業務を引き継ぐことができます。これにより、自身の退職後も業務が円滑に進むため、会社側の不満や不安を最小限に抑えることができます。

こうした準備は、「責任感のある社員」という評価につながり、将来的なキャリアにもプラスの影響を与える可能性があります。

さらに、適切な引き継ぎを行うことで、退職後に頻繁に問い合わせを受けるといった事態も避けられ、新しい生活に集中することができるでしょう。

就業規則を確認しておく

就業規則には退職に関する情報が記載されているため、事前に理解しておくことで予期せぬ問題を避けられます。

具体的には、退職金の支払いルールを確認しておくことが大切です。退職金の有無や金額の算定方法、支給条件などを把握しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。また、退職後の給与の受け取り方法についても確認が必要です。

通常の振込か手渡しか、いつ頃支払われるのかなどを事前に把握しておくと安心です。さらに、退職を伝えるタイミングについても就業規則に記載されるのがほとんどです。たとえば、「1カ月前までに申し出ること」などの規定があれば、それに従うことでスムーズな退職プロセスを実現できるでしょう。

退職理由は本音と建前を使い分ける

退職理由を伝える際は、本音よりも建前を優先することをおすすめします。これは、不必要な軋轢を避け、円満な退職を実現するためです。

たとえば、実際には会社の給与に不満があったり、経営方針に同意できなかったりしたとしても、そのような理由を正直に伝える必要はありません。

むしろ、「自己成長のため」「新しいキャリアにチャレンジしたい」といった前向きな理由を述べるほうが良いでしょう。あるいは「家族の事情」など、会社側も深く追及しにくい理由を選ぶのも一つの方法です。

まとめ

退職時のトラブルを回避するためには、事前の準備と適切な対応が不可欠です。就業規則の確認や退職理由の伝え方、引き継ぎの準備など、細心の注意を払うことで円滑な退職プロセスを実現できます。退職代行サービスを利用する場合も、運営元や料金形態、サービス範囲の確認が重要です。

これらの点に留意することで、不要なストレスや法的トラブルを避け、新たなキャリアへの第一歩を踏み出すことができます。退職は人生の重要な転機です。慎重に準備し、適切に対応することで、次のステージへの円滑な移行を実現しましょう。

株式会社Amazia Link

LogsFix編集部

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