退職代行は、面倒な会社とのやり取りなどを代わりに行ってもらえるため、利用を検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、インターネット上には「退職代行はやめとけ」といった否定的な情報も見られます。
本記事では、退職代行利用のデメリットについて詳しく解説していきます。退職代行サービスを利用して「後悔したくない」という方はぜひ最後までご覧ください。
退職代行を利用するデメリット
退職代行は、自分で退職の意思を伝えずに退職できるのが魅力のサービスです。しかし、退職代行には下記のようなデメリットが伴います。
- 退職をするために費用が発生する
- 依頼先によっては交渉(未払いの給与や有休消化など)ができない
- 勤務先から直接連絡が来る場合がある
- 退職に必要な書類がすぐに送られてこないことがある
- 悪質な退職代行業者に依頼してしまう恐れがある
- 退職をした勤務先から悪い印象を持たれてしまうことがある
- 理想的な条件で退職できないことがある
- すぐに退職できない場合もある
- 勤務先への罪悪感を抱くことがある
- 情報漏洩のリスクが高まる
それぞれについて詳しく解説していきます。
退職をするために費用が発生する
退職代行を利用するには、一般的に3万円〜5万円程度かかります。サービスによって異なりますが、1万円以下など格安で利用できるサービスは少ないのが現状です。格安サービスがあったとしても、「〇〇日に退職したい」など希望通りに退職できなかったり、失敗しても返金されなかったりするケースがあるため、おすすめできません。
依頼先によっては未払いの給与や有休消化の交渉ができない
未払いの給与や有休消化の交渉ができないケースもあります。民間企業(労働組合と未提携)が運営する退職代行サービスは、依頼者の退職意向を代わりに電話で伝えることしかできません。
労働組合運営の場合、労働組合の組合員となって退職代行を依頼するので、未払い給与や有休消化などの権利に関する交渉は「団体交渉」として認められます。
また、弁護士が行う場合は、個人が交渉する際の代理人になれるので、弁護士が交渉できます。
しかし、労働組合関係でも弁護士運営でもない退職代行業者は、組合でないから団体交渉もできず、弁護士でないから個人の交渉を代理することもできません。
勤務先から直接連絡が来る場合がある
基本的に退職代行は、会社側には「利用者に直接連絡しないように」と依頼をします。しかし、強制力がないため、会社によってはサービス側からの連絡を無視して、直接連絡が来る可能性があります。一般的には、本当に退職の意思があるのかを確認するために連絡が来ますが、なかには嫌がらせ目的で連絡をしてくる会社もあるので注意が必要です。
ひどい場合は、社員が自宅に押しかけてくる場合もあるでしょう。会社と連絡を取らずに退職できるのがメリットですが、なかには直接接触されるリスクがあることを理解しておきましょう。
退職に必要な書類がすぐに送られてこないことがある
退職する際には、離職票や健康保険資格喪失証明書などが発行されます。基本的には、退職する際に発行してもらえますが、退職代行を利用すると必要な書類がすぐに送られてこないことがあります。
会社側が書類を郵送し忘れてしまうほかにも、退職者を困らせるため意図的に送らないケースも少なくありません。書類の手配などは、退職代行サービスの範囲外になる可能性もあり、自分で手配しなくてはならないケースもあるため、注意が必要です。
悪質な退職代行業者に依頼してしまう恐れがある
退職代行サービスには、悪質な業者も存在します。悪質な業者に依頼してしまうと、下記のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 会社側に対して嘘の退職理由を伝える
- 迷惑電話やメールが増える
- 費用を払った後に音信不通になる
このようなトラブルを防ぐには、しっかりとした対応をしてくれる退職代行業者に依頼することが大切です。公式Webサイトだけでなく、実際にサービスを利用した人の口コミ・評判なども参考にしましょう。
情報漏洩のリスクが高まる
退職代行を利用する際には、依頼者側の勤務先や連絡先など多くの個人情報をサービス会社に渡すことになります。基本的には、サービスの利用に関することにしか個人情報は使われません。しかし、悪徳業者の場合、個人情報が流出し退職代行を利用したことを転職先に知られてしまうといったケースも考えられます。
無事に退職できたとしても、迷惑電話やメールが増えたり、何らかの形で個人情報を悪用されたりするケースもあるでしょう。そのため、情報漏洩のリスクが高まることにも留意しておきましょう。
退職をした勤務先から悪い印象を持たれてしまうことがある
退職の意向は、自ら会社に伝えるのが一般的です。そのため、退職代行を利用して退職の意向を伝えることで、勤務先から悪い印象を持たれる可能性があります。いきなり業務が増えたり、退職者の役割をカバーしたりしなくてはならないため、マイナスな印象を持たれることはしかたがないともいえます。
理想的な条件で退職できないことがある
退職代行を使ったからといって、必ずしも理想的な条件で退職できるわけではありません。希望どおりの退職日にならなかったり、有休消化が思いどおりにいかなかったりすることもあるでしょう。
すぐに退職できない場合もある
退職代行を利用しても、すぐに退職できないこともあります。
法的には、退職の意思表示をしてから原則として2週間で退職は成立します。
退職代行を利用したタイミングで有休残日数がない場合は、その後2週間出勤をするか、2週間分の欠勤扱いとなってしまいます。
即日退職できるとうたっているサービスでも、勤務先の規定によって異なることを理解しておきましょう。
勤務先への罪悪感を抱くことがある
自分で行える退職手続きに代行サービスを使うことで、勤務先への罪悪感を抱く人もいます。お世話になった上司や同僚に感謝の気持ちを伝えずに会社を去ることや、仕事の負担をかけてしまうことに罪悪感を抱き、それが強いストレスになる場合もあります。
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退職代行を利用するメリット
退職代行に関するさまざまなデメリットを紹介しましたが、メリットも多くあります。退職代行に期待できるメリットは、下記のとおりです。
- 心理的ストレスを減らして退職できる
- 退職を引き止められたり、理由を聞かれたりすることを避けられる
- 弁護士に依頼をすることで未払いの給与や慰謝料請求もできる
デメリットだけでなく、メリットについても理解しておきましょう。
心理的ストレスを減らして退職できる
一般的に退職する際は、上司に退職の話を切り出し、会社とよく話し合って退職します。退職の話が思うように進まなかったり、パワハラまがいな発言をされたりするケースも多々あるため、心理的ストレスを受けることも。
しかし、退職代行であれば、心理的ストレスを減らして退職することが可能です。退職の意向を第三者に伝えてもらえるうえに、有休消化の意思表示も伝えてもらえるため、心理的ストレスを減らして退職できます。
退職を引き止められたり、理由を聞かれたりすることを避けられる
自ら会社に退職の意向を伝えて退職する場合は、引き止められたり、理由を聞かれたりするケースも少なくありません。詳しい退職理由を伝えても納得してもらえず、結局退職できない可能性もあるでしょう。
退職代行であれば、本人との直接的なコミュニケーションがない分、会社側も引き止めるチャンスや意欲が少なくなり、高い確率で退職できます。
弁護士に依頼をすることで未払いの給与や慰謝料請求もできる
弁護士による退職代行サービスに依頼することで、トラブル発生時に法律に基づいて対処してもらえたり、未払いの給与や慰謝料の請求をしてもらえたりもできます。
さらに会社側は弁護士から請求を受ければ、法的措置を取られることを意識し、未払給与の支払いをしてもらえる可能性が高まります。
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退職代行サービス利用がおすすめの事例
退職代行サービスは費用が発生する点や、心理的ストレスを考えると、自分で退職の意向を伝えるのがベストです。しかし、下記のような場合は退職代行サービスを利用するのがおすすめです。
- 退職を上司に申し出にくい
- 自分から退職を申し出ても受理してくれなかった
- 残業代の未払いや有休の未消化の問題がある
それぞれの事例について詳しく解説していきます。
退職を上司に申し出にくい
退職を上司に申し出にくい場合は、退職代行サービスを利用するのがおすすめです。たとえば、心身に不調を抱えていたり、上司との人間関係がうまくいっていなかったりする場合があげられます。
ほかにも感情的になりやすい方や、自分の気持ちをうまく言語化できない方は、退職代行サービスを利用した方が余計なトラブルを避け、冷静な状態で退職できるでしょう。
自分から退職を申し出ても受理してくれなかった
一度会社に退職の旨を伝えたものの、退職を受理してもらえないケースも少なくありません。特に人手不足が深刻な職場は、退職を申し出ても取り合ってもらえない可能性があります。
何度も主張するのがストレスになる場合は、退職代行サービスを利用することで、スムーズに退職できるでしょう。
残業代の未払いや有休の未消化の問題がある
残業代の未払いや有休の未消化などのトラブルがある場合は、退職代行サービスの利用がおすすめです。自ら会社に退職の意向を伝えても、金銭トラブルをうやむやにされ、支払いが行われず退職することになる可能性があります。
弁護士が担当している退職代行サービスを利用すれば、会社と直接やり取りすることなく、金銭的なトラブルを解消して退職することが可能です。
退職代行サービスを提供している業者の種類
退職代行を任せることができる業者は、3種類の運営元に分けられます。それぞれ受けられるサービスが異なるため、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
ここからは、退職代行サービスの種類について紹介します。
- 民間企業が運営する退職代行業者
- 合同労働組合が運営する退職代行ユニオン
- 法的な知識が豊富でさまざまな対応が可能な弁護士
民間企業が運営する退職代行業者
民間企業が運営する退職代行業者が行えるのは、主に依頼者の退職に関する意向を伝えることです。退職日の指定や有休消化など非弁行為に該当する対応はできません。非弁行為とは、弁護士以外の人が報酬目的で、業務として法律事務を行うことを指します。
つまり、依頼者に代わり退職の意思を伝達してくれるだけのため、有休消化についての要望や金銭的トラブルを抱えている場合は、おすすめできません。単に退職の旨を伝えられないと悩んでいる方に向いています。
合同労働組合が運営する退職代行ユニオン
退職代行ユニオンは、合同労働組合が運営している退職代行サービスです。組合員として退職代行を依頼するので、下記の内容も「団体交渉」として対応してもらえます。
- 退職意思の伝達
- 退職日の交渉
- 未払給与の支払い交渉
- 有休消化の交渉
費用が比較的安く、追加費用が発生することもないため、安心して利用できます。
法的な知識が豊富でさまざまな対応が可能な弁護士
弁護士が担当する退職代行サービスは、労働者に代わって退職の旨を伝えてくれるうえに、さまざまな条件交渉も可能です。具体的に下記のような交渉ができます。
- 退職条件の交渉
- 未払給与の支払い交渉
- 労働審判や裁判の対応
このように金銭トラブルがある場合や条件交渉をしたい場合は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
安心できる退職代行サービスの選び方やコツ
退職代行サービスを利用する際は、実績が豊富で安心できる業者に依頼することが大切です。安心できる退職代行サービスを選ぶ際のコツは、下記のとおりです。
- 最低限、顧問弁護士がいる業者を選ぶ
- 料金相場と比較して妥当な金額かを確認する
- 交渉や返金対応は可能なのかを確認する
- これまでの活動実績を確認する
- 評判や口コミをチェックして違法な行動をしていないか調査する
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
最低限、顧問弁護士がいる業者を選ぶ
退職代行サービスを選ぶ際は、最低限、顧問弁護士が在籍しているかを確認しましょう。勤務先によっては、スムーズに退職できなかったり、退職を受け入れてもらえなかったりする可能性があります。稀ですが、損害賠償請求をされるケースも否定できません。
そこで顧問弁護士がついていれば、勤務先に給与未払いなどに対応してもらいやすくなります。もし訴訟などのトラブルに発展した場合でも、顧問弁護士がついていれば安心です。
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料金相場と比較して妥当な金額かを確認する
料金相場と比較して妥当な金額であるかも確認したい部分です。相場よりも大幅に安い業者は、悪質なサービスを提供している可能性も少なくありません。料金を支払ったものの、退職できなかったり、返金してもらえなかったりするケースがあります。
そのため、安さだけで決めず、相場の範囲で適切なサービスを受けられるか、しっかりと確認しましょう。
交渉や返金対応は可能なのかを確認する
金銭トラブルの発生や引き止められそうな場合の交渉は、弁護士に依頼をしましょう。
「未払給与を払ってもらいたい」「有休を消化してからやめたい」などと考えている場合に、法的に相手方と交渉可能なのは弁護士と、団体交渉が認められている合同労働組合が運営する退職代行ユニオンのみです。
また、退職代行業者に対して「万が一退職できなかった場合は返金してもらえるのか」も確認しておきましょう。全額返金保証が付いている業者を選ぶと安心です。
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これまでの活動実績を確認する
これまでの活動実績も大切な部分です。実績が豊富であり、利用者が多い場合は、トラブルなどが発生した場合でもスムーズに対応してもらえます。成功事例が多く掲載されている場合は、より安心して依頼できるでしょう。
評判や口コミをチェックして違法な行動をしていないか調査する
退職代行サービスを選ぶ際は、公式Webサイトだけでなく、評判や口コミもチェックしましょう。実際にサービスを利用した人の口コミなどを確認することで、良い点だけでなく悪い点も知ることができます。
公式サイトや広告に掲載された口コミは、公開元の企業に編集される可能性があるため、よりリアルな意見を知りたい場合はSNSやGoogleの口コミを参考にすることをおすすめします。
主な退職代行サービスの口コミ
退職代行業者を選ぶ際の注意点
退職代行業者を選ぶ際には、下記の注意点に留意しましょう。
- 法律を遵守しているかを確認する
- 契約の際に悪質な内容がないかを確認する
- 運営会社の信頼度を確認しておく
- トラブル時にどのように対応するのかをチェックする
1つずつ詳しく見ていきましょう。
法律を遵守しているかを確認する
退職代行業者を選ぶ際は、法律を遵守しているかを確認しましょう。退職代行サービスのうち、給与未払いや有休消化などの交渉をできるのは、弁護士と団体交渉が認められている合同労働組合が運営する退職代行ユニオンのみです。民間企業が行う退職代行が交渉をするのは、非弁行為に該当し、法律違反となります。
もし弁護士以外が条件交渉などを担当するとなると、法律違反になるため、必ず法律を遵守しているか確認しましょう。
契約の際に悪質な内容がないかを確認する
契約の際に悪質な内容がないかも確認しましょう。高額な違約金や追加費用の発生など曖昧な条件には注意が必要です。契約内容の曖昧な部分を放置していると、後にトラブルとなる可能性があります。
そのため、契約前に費用やサービス内容、キャンセル時の対応などを詳しく確認しましょう。
運営会社の信頼度を確認しておく
運営会社の規模や歴史、実績などをチェックし、信頼できる会社かどうか確認しておきましょう。特に公式Webサイトに会社概要や運営者情報が明確に記載されているかどうかは見ておきたいポイントです。第三者機関に登録されているか、法的なトラブルがないかも調査することで、より信頼できる業者を見つけられます。
トラブル時にどのように対応するのかをチェックする
万が一、退職できなかったり、トラブルが発生したりした場合、どのような対応をしてくれるのかもチェックしましょう。
実績の多い業者であれば、トラブルが発生した場合でも対応方法が決まっていたり、臨機応変に対応してもらえたりします。一方で実績が少ない業者だと、トラブル時に十分な対応を受けられない可能性もあるため、注意が必要です。
まとめ
退職代行を利用するデメリットは、費用がかかる点や依頼先によっては未払いの給与や有休消化の交渉ができないなどが発生する点があげられます。なかには、悪質な業者も存在します。
円滑に退職を進めるためには、実績が豊富で手厚いサポートを受けられる業者に依頼することが大切です。顧問弁護士の有無や口コミ・評判、実績など、さまざまな部分を確認し、信頼できる業者を見つけましょう。
監修:石川弘子 | フェリタス社会保険労務士法人 代表
特定社会保険労務士、産業カウンセラー、ハラスメント防止コンサルタント
著書:「あなたの隣のモンスター社員」(文春新書)
「モンスター部下」(日本経済新聞出版社)