契約社員として有期雇用で働いていても、入社直後に自分が求めていた環境と異なることに気がつき、「退職」を考えることもありますよね。しかし、契約社員の場合は契約期間が定められているため、「辞めたい」と申し出ても、基本的には契約期間満了までの勤務が求められます。
本記事では、契約期間途中に退職することが認められるケースや、辞めた場合のリスクについて詳しく解説します。
契約社員は契約期間途中、1か月で辞めることはできない
契約社員として働き始めてすぐに、「この職場は自分に合わない」と感じることがあるかもしれません。しかし、契約社員の場合、雇用期間が定められているため、原則として契約期間中に退職することはできません。これは、正社員との大きな違いの一つです。
正社員は「期間の定めのない雇用契約」を結んでいるため、原則いつでも退職の申し出が可能です。一方、契約社員は、会社と特定の期間を定めて雇用契約を交わしており、多くの場合1年ごとに更新するかどうかを判断します。
この雇用契約(期間)は、会社と契約社員の双方に契約を履行する義務があります。そのため、一部(次の章で説明します)の例外を除いて、契約途中での自己都合退職は認められません。
もし、契約社員が無断欠勤などの強引な方法で会社を離れようとした場合、会社側は契約不履行による損害を被ったとして、損害賠償を請求する権利を持ちます(具体的な金額は会社が被った実際の損害に基づいて算出されます)。
したがって、契約社員として働き始めて1か月程度で退職を考えている場合は、慎重に対応する必要があるでしょう。
安易に無断欠勤や一方的な退職を選択するのではなく、まずは会社と話し合いの機会を持つことが重要です。状況によっては、円満な退職が可能になるかもしれません。
契約社員が1か月で仕事を辞められるケース
ここまで、契約社員の短期離職が原則として難しいことを解説してきましたが、「いかなる場合でも認められない」というわけではありません。契約社員が契約期間以外で仕事を辞められるケースには、以下のような状況があります。
- 会社の合意があった場合
- ハラスメントなどの被害に遭った場合
- 勤続年数が1年以上である場合
民法628条では、緊急性の高い「やむを得ない事由」がある場合、直ちに契約解除することが認められています。この条文によると、雇用期間が定められていても、やむを得ない理由があれば、契約社員も即時に退職できる可能性があります。ただし、その事由が退職者側の過失によるものであれば、反対に責任を負う可能性があることにも注意しましょう。
民法628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償責任を負う。
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_3-Ch_2-Se_8-At_628
詳しく解説します。
会社の合意があった場合
契約社員が契約期間の途中で退職を申し出た場合、会社側には拒否する権利があります。契約期間中は双方に契約履行の義務があるため、会社は労働力の確保を前提に事業計画を立てているため、突然の退職申し出に対しては、拒否されるケースが多いでしょう。しかしながら、会社側が契約社員の退職に合意した場合は、契約義務の違反とはなりません。
また、会社側の合意がある場合、損害賠償請求も回避できます。双方の合意による契約解除となるため、会社側が被った損害について賠償を求められる可能性は極めて低くなります。
ハラスメントなどの被害に遭った場合
職場でのハラスメント被害は、契約社員が1か月で仕事を辞められる正当な理由の一つとなります。
具体的には、上司や同僚からの暴言や脅迫、不当な差別待遇、性的な嫌がらせなどが該当します。とくに、心身の健康に影響を及ぼすような状況下では、契約期間中であっても即時退職が正当化されるでしょう。ハラスメント行為が原因で仕事を継続することが困難になった場合、それは「やむを得ない事由」として認められる可能性が高いのです。ただし、ハラスメントの判断基準は個々のケースによって異なるため、退職を考える前に、まずは会社の相談窓口や人事部門に状況を報告し、改善を求めることが重要です。
相談しても改善されない場合や、相談するまでもなく明らかなハラスメントが確認できる場合は、退職の正当な理由がより強くなるでしょう。
勤続年数が1年以上である場合
契約社員であっても、勤続年数が1年以上に達した場合は、比較的容易に退職できる可能性があります。
労働基準法第137条には、契約社員の退職に関する重要な規定が設けられています。この条文によると、契約期間が1年を超える労働契約を締結した労働者は、契約開始から1年が経過した日以降であれば、いつでも退職を申し出ることができます。ただし、この規定には一つの条件があります。それは、もともとの契約期間が1年を超えている必要があるということです。
たとえば、2年間の契約を結んでいる契約社員が1年以上働いた場合、この条項に基づいて退職を申し出ることが可能となります。この規定は、長期契約によって労働者の退職の自由が不当に制限されることを防ぐためのものです。
労働基準法 第百三十七条
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法
怪我や病気によって就労できない場合
怪我や病気によって就労の継続が不可能となった場合、契約期間中であっても退職が認められる可能性があります。ただし、退職が認められる怪我や病気の程度は、会社によって判断が異なることは理解しておきましょう。
一般的に、長期の治療が必要な重病や、仕事に大きな支障をきたす重度の怪我の場合は、契約期間中でも退職が認められるケースが多いでしょう。
家族の介護が必要になった場合
契約社員の家族に介護が必要な状況が発生した場合も、契約期間中の退職が認められる可能性があります。とくに、契約社員本人が主な介護者となる必要がある場合や、介護と仕事の両立が困難な状況では、退職の正当性が高まります。退職を申し出る際には、家族の介護が必要であることを証明する書類の提出を求められる場合があります
契約社員の強行な途中退職は損害賠償請求される可能性がある
これまで述べたように、契約社員が契約期間の途中で退職を希望する場合、会社側の承諾や正当な理由がある場合を除いて、原則として認められません。
しかし、退職の申し出が認められなかったからといって、強引に退職を進めることは避けるべきです。そのような行動は、会社側に損害を与える可能性があり、時として損害賠償請求に発展という可能性もあります。
以下のような行動は、損害賠償請求につながる可能性がある行動です。
- 無断欠勤を続ける
- 突然の退職による業務の中断
- 引き継ぎを行わずに退職する
- 会社の機密情報を持ち出す
ただし、会社側も円満な解決を望む場合が多いと考えられるため、直ちに法的措置を取ることは稀でしょう。契約社員が退職を希望する場合は、まずは会社側と誠実に話し合いの姿勢を持つことが大切ですが、やむを得ない事情がある場合は退職代行サービスを利用するのも一案です。
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契約社員が円満に退職するためのポイント
契約社員が緊急性の高い事情により退職せざるを得ない場合、円満に退職するためのポイントを押さえておきましょう。
とにかく早めに相談する
1日でも早く退職の意思を会社に伝えることは非常に重要です。契約社員の場合、会社側は次回の契約更新を考えている可能性があります。厚生労働省のガイドラインでは、契約を更新しない場合、会社側は30日前までに予告しなければならないと定められています。
そのため、できるだけ早く退職の意思を伝えることで、会社側も人材確保の時間を確保できます。また、早めの相談は引き継ぎ作業を余裕を持って行うことができ、円満な退職につながります。
できるだけ繁忙期は避ける
繁忙期は人手が最も必要な時期であり、退職によって業務に支障をきたす恐れがあります。また、繁忙期は引き継ぎの時間を確保することが難しくなります。
可能な限り、会社の繁忙期を避けて退職を申し出ることで、円満な退職の可能性が高まります。
就業規則を把握しておく
就業規則には、退職希望日の何日前までに退職の意思を伝える必要があるかなどが記載されています。この規則に従って退職を申し出ることで、会社側との摩擦を避けることができます。また、契約期間を確認し、満了までの勤務が可能かどうかも検討しましょう。
契約満了まで退職以外の方法がないか相談する
原則として、契約社員の途中退職は望ましくありません。特別な事情がある場合には、正直に状況を説明し、退職せずに契約満了まで働き続ける方法がないか模索する姿勢を持つことが重要です。たとえば、勤務時間の調整や業務内容の変更など、会社側と協議することで解決策が見つかる可能性もあります。
退職代行サービスの利用も検討してみる
退職代行サービスは、本人に代わって退職の意思を伝えたり、必要な手続きを代行してくれるサービスです。このサービスを利用するメリットとしては、退職に伴うストレスの軽減や、専門知識を持つスタッフによる適切な対応が期待できることなどが挙げられます。ただし、契約期間満了前の退職には交渉が必要となるため、弁護士や労働組合が運営(提携)する退職代行サービスの利用がおすすめです。
民間企業の退職代行サービスでは、非弁行為に該当するリスクを避けるため、有期雇用契約の退職に対応していない場合が多いのです。
▼契約社員のサポート実績豊富な退職代行サービス
まとめ
契約社員は、正社員よりも制限があるため辞めにくいのは事実です。しかし、退職することは労働者の権利のため、「いかなる場合も認められない」ということはありません。特定の状況下では退職できる場合もあるため、悩んでいるのであれば早めに相談しましょう。会社の人には相談しにくい場合、退職代行サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。契約社員のような有期雇用でも対応可能なサービスが増えているので安心して問い合わせしてみてください。
株式会社Amazia Link
LogsFix編集部
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