
退職代行サービスは、「仕事を辞めたいけれど、自分では言い出せない」という人にとって、非常に便利なサービスです。しかしその反面、失敗するリスクやトラブルが発生する可能性もゼロではありません。また、ネットで紹介されている内容は、提供者側に有利な情報が強調されがちです。そのため、すべてを鵜呑みにするのは避けましょう。
この記事では、退職代行サービスを利用する際のリスクやトラブル事例について解説し、安全に利用できるサービスを選ぶためのポイントを”客観的”に紹介します。ぜひ参考にしてください。
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退職代行で失敗するケースとは?
退職代行を利用しても、場合によってはうまくいかないことがあります。では、どのようなケースが失敗につながるのでしょうか?具体例を見ていきましょう。
失敗例1:退職できなかった
退職代行の目的は、会社に退職の意思を伝え円滑に退職することです。「失敗」と聞くと、退職できないケースを想像するかもしれませんが、実際にはほとんどありません。これは、日本の労働法が労働者の権利を保護しているためです。
ただし、退職手続きのスピードや進め方にはさまざまなパターンがあります。スムーズに辞められる場合もあれば、些細なトラブルが発生して解決後に退職できるケース、または退職後に損害賠償を請求される可能性もあります。
そのため、「100%の退職実績」といった表面的な数字に過度な安心感を抱かないよう注意しましょう。
失敗例2:「即日」退職ができなかった
退職代行サービスを利用しても、即日退職できないケースがあります。
民法では、期間の定めのない雇用契約の場合、原則として2週間前に退職の意向を伝える必要があると定められているため、基本的には退職代行サービスが退職の意向を伝えた翌日から最低2週間は勤務する必要があります。
その期間、有給休暇を消化したり、欠勤扱いにしたりすることで実質的な「即日退職」を実現する方法もありますが、企業によっては認められないケースもあります。
※こちらの記事もおすすめ:退職代行サービスなら「即日退職」できる!その理由や利用の流れを説明
失敗例3:会社から連絡が来る
会社から直接連絡が来る可能性を考える利用者も多いでしょう。
実際に、退職代行サービスが本人に直接連絡しないよう伝えたにもかかわらず、「会社から直接連絡が来た」という事例もあります。
連絡内容としては、意思(本人)確認や、引き継ぎ内容、私物の回収などについてが多いです。退職代行サービスを利用する多くの方は「一切の連絡を絶ちたい」と考えていると思いますが、完全に連絡を断ち切ることが難しい場合もあります。
ただし、連絡が来たからと言って応答する必要はありません。退職代行サービスの担当者に対応を依頼しましょう。
失敗例4:有給消化や残業代・退職金の交渉ができない
退職代行サービスを利用する際、有給休暇の消化や未払いの残業代の請求がスムーズに進まないトラブルが発生することがあります。これは、民間企業が運営する退職代行サービスには法的な交渉権がないことがひとつの原因です。
民間企業の退職代行ができるのは「退職の意思を伝えること」のみであり、有給休暇の取得や未払い賃金、残業代の請求といった交渉は行えません。そのため、こうした手続きを確実に進めたい場合は、弁護士や労働組合が運営する退職代行サービスを選ぶことが重要です。
失敗例5:高額な追加料金を請求される
退職代行サービスを利用する際、高額な追加料金を請求されるケースがあります。とくに、他のサービスよりも極端に安い価格のものには注意しましょう。
このようなトラブルを防ぐには、事前に料金システムや価格体系が明確な業者を選ぶことが重要です。また、打ち合わせの際に利用料金だけでなく、法的な対応が必要になった時の追加料金についても確認しておくことが大切です。
失敗例6:退職後に必要書類を送ってもらえない
退職代行サービスを利用した後、必要な退職関連書類を適切に受け取れないケースがあります。例えば、源泉徴収票や雇用保険被保険者離職票など、今後の就職活動や各種手続きに必要な重要書類が、期待したタイミングで送られて来ないことがあります。
これらの書類は、次の就職先への提出や失業保険の申請など、退職後の生活に直結する重要な書類です。退職代行サービスとの連絡が途絶えたり、対応が遅れたりすることで、これらの書類の受け取りが大幅に遅れ、退職者の生活に支障をきたす可能性があります。
失敗例7:懲戒解雇される
「懲戒解雇になるのではないか」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、退職代行を利用したことを理由に懲戒解雇されても、法律的には有効ではありません。
懲戒解雇は、会社にとって最も重い処分であり、会社全体の秩序を著しく乱したと認められる場合にのみ認められます。日本では、解雇は容易ではなく、正当な理由なく行うことは法律で禁止されています。そのため、横領などの重大な違法行為や、ハラスメントなど会社に重大な損害を与える行為がない限り、退職代行の利用を理由とする懲戒解雇は、裁判で争われた場合、無効と判断される可能性が高いでしょう。
失敗例8:損害賠償請求をされる
単に退職代行サービスを利用しただけでは、会社の権利侵害には該当しないため、損害賠償請求の根拠とはなりません。しかし、必要な引き継ぎを全く行わず、会社に具体的な損害が発生した場合など、会社に責務違反があると考えられる場合には、損害賠償請求の対象となる可能性があります
退職代行が失敗する原因とは?
退職代行サービスを利用したものの、思うように退職できなかったというケースも少なくありません。ここでは、その失敗が起こる主な原因について解説します。
交渉不可の退職代行サービスを利用してしまう

退職代行サービスには、大きく分けて「弁護士が運営するもの」「労働組合が運営するもの」「民間(一般)企業が運営するもの」の3種類があります。弁護士や労働組合が運営している場合、法律に基づいた交渉が可能ですが、民間企業が運営する退職代行では法律上できることに制限があるため、対応範囲に限界があります。
とくに、法律の資格がない業者が「非弁行為」をすると、違法になる可能性があります。例えば、未払いの給与の請求や退職金の交渉などは、弁護士や労働組合の団体交渉権を利用しなければ対応できません。そのため、企業側が「退職代行の指示には従えない」と主張し、退職が難航するケースもあります。
退職代行サービスを利用する際は、運営元がどのような団体なのかを事前に確認し、自分の状況に合ったサービスを選ぶことが重要です
会社側が退職代行について理解を深めている
近年、退職代行サービスの利用が広がるにつれて、企業側もその対応方法を学び、慎重に対処するようになっています。そのため、退職代行を利用しても、すんなりと退職が認められないケースが増えています。
例えば、就業規則に「退職は〇日前までに申し出ること」と定められている場合、会社がそのルールを根拠に退職を引き延ばそうとすることがあります。また、一部の企業では、退職代行の交渉範囲を理解したうえで「この対応は正当なものなのか」と主張し、本人との直接のやり取りを求めることもあります。
【トラブルを未然に防ぐ】安全な退職代行サービスを選ぶポイント
退職代行を利用する際は、安全で信頼できるサービスを選びたいですよね!
以下が安全な退職代行サービスを選ぶ際のポイントです。
- 弁護士や労働組合が運営するサービスか
- 料金体系が明確であるか
- 利用者の口コミや評判が良いか
- サービス内容が充実しているか
それぞれ解説します。
弁護士や労働組合が運営するサービスを選ぶ
先述の通り、退職代行サービスを選ぶ際に「運営元」を確認することは非常に重要です。弁護士運営や労働組合が運営するサービスには、「交渉が可能」という大きな特徴があります。
とくに弁護士が直接対応してもらえる退職代行サービスであれば、非弁行為のリスクがなく、安心して利用できます。「顧問弁護士」がいるサービスは、実際に対応する担当者が弁護士ではないことが多いため、事前に確認が必要です。
民間企業が労働組合と「提携」することで「交渉可能」としている退職代行サービスも増えていますが、非弁行為に該当する可能性があるとも言われています。
ここについては現時点で見解が分かれているため、不安がある方は、「労働組合運営」か「弁護士運営」の退職代行サービスを利用するとより安心です。
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料金体系が分かりにくいサービスは避ける
退職代行サービスを選ぶ際、料金体系の明確さは非常に重要です。不透明な料金システムは、後々のトラブルにつながる可能性があります。確認すべき点としては以下があります。
- 基本料金の明示
- 追加料金の有無とその内容
- 支払い方法と時期
- 返金保証の有無
契約前に「追加で費用が発生するケースはありますか?」など、一言確認をしてみましょう!
利用者の口コミや実績を確認する
退職代行サービスを選ぶ際、利用者の口コミや評判を確認することは非常に有効です。実際の利用者の声は、サービスの質や信頼性を判断するうえで貴重な情報源となります。
企業の公式サイトに掲載された口コミは、編集される可能性があるため、よりリアルな意見を知りたい場合はSNSやGoogleビジネスプロフィールなどの口コミを参考にすることをおすすめします。
確認したいポイントは以下になります。
- 退職成功率
- 対応の迅速さと丁寧さ
- 追加料金の有無
- 退職後のフォロー
ただし、口コミや評判は主観的な意見が含まれるため、複数の情報源を比較することが重要です。また、極端に悪い評判や良すぎる評判にも注意が必要です。
サービス内容が充実しているか
退職代行サービスを選ぶ際、サービス内容の充実度も重要な判断基準となります。充実したサービスとは、単に退職の意思を伝えるだけでなく、以下のような付加価値を提供するものを指します。
- 24時間対応
- 退職後の書類手続きサポート
- 有給休暇消化の交渉
- 未払い賃金や残業代の請求サポート
- 退職後のキャリア相談
とくに、弁護士が所属する退職代行サービスであれば、退職に関する交渉や法的なトラブルへの対応など、幅広いサポートを受けられる可能性があります。自分のニーズに合ったサービスを選ぶことで、スムーズな退職を実現できます。
退職代行の利用で失敗しないための注意点
退職代行サービスの利用で失敗しないための注意点を解説します。
1、現状報告をする際は隠し事をしない
退職代行サービスを利用する際、現状報告時に隠し事をしないことが重要です。なぜなら、正確な情報提供が適切なサポートにつながるからです。
とくに心がけるべきことは、労働環境や心身の状況を詳しく伝えることです。パワハラや体調不良、過重労働などの問題があれば報告しましょう。また、現在無断欠勤中であるなど、特殊な状況も隠さずに伝えることが大切です。
これらの情報を包み隠さず伝えることで、退職代行サービスが最適なサポート方法を提案してくれます。また、潜在的なリスクを事前に把握し、対策を講じることも可能になります。
2、あらかじめ引き継ぎ資料をまとめておく
退職代行サービスを利用する際、可能であれば引き継ぎ資料をあらかじめまとめておくことをおすすめします。これには、会社からの問い合わせや連絡を最小限に抑えられるというメリットがあります。
また、スムーズな業務の引き継ぎが可能になり、会社との良好な関係を維持しやすくなります。引き継ぎ資料には、担当業務の進捗状況や重要な連絡先、データの保存場所などを記載しておくと良いでしょう。
ただし、これは可能な範囲で行えば良く、無理して作成する必要はありません。心身の状況によっては難しい場合もあるでしょう。その場合は、退職代行サービスにその旨を伝え、アドバイスを求めることをおすすめします。
3、貸与物の返却は済ませ、私物は持ち帰っておく
退職代行サービスを利用する際、可能であれば貸与物の返却や私物の回収を済ませておくことをおすすめします。これにより、会社とのやり取りを最小限に抑えられ、退職手続きをよりスムーズに進められます。また、退職後のトラブルを防止できるという利点もあります。
具体的には、会社から借りているパソコンや携帯電話などの機器、制服、社員証などを返却し、デスクに残している私物を持ち帰るのが望ましいでしょう。
ただし、これらが未回収でも大きな問題にはなりません。退職代行サービスを通じて後日対応することも可能です。心身の状況や時間的制約により返却や回収が難しい場合は、退職代行サービスにその旨を伝え、適切なアドバイスを求めることをおすすめします。
まとめ
退職代行サービスを利用する際は、安全性と信頼性を見極めることが重要です。適切なサービスを選択し、必要な準備を行うことで、スムーズな退職プロセスを実現できます。
退職代行サービスによる退職失敗のリスクは低く、法的にも保護されています。しかし、サービス選びには慎重さが求められます。明確な料金体系、専門家の在籍の有無、充実したサービス内容を確認し、利用者の評判も参考にしましょう。
また、正直な現状報告や引き継ぎ資料の準備など、自身でできる対策も重要です。これらの点に注意を払うことで、退職代行サービスを効果的に活用し、新たなキャリアへの一歩を踏み出せるでしょう。
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株式会社Amazia Link
LogsFix編集部
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