退職代行で起こるトラブル事例とは?安全な業者の選び方もご紹介

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公開日:2024.10.29

退職を考えているものの、上司との関係や職場の雰囲気が原因で言い出せない方も多いのではないでしょうか。そんな時に利用を検討するのが退職代行サービスです。しかし、利用にあたってはトラブルに巻き込まれるリスクもあります。

本記事では、退職代行サービス利用時に起こりうるトラブルとその対策について詳しく解説していきます。

退職代行を利用するときに起こるトラブルの事例とは

退職代行サービスを利用する際には、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。以下では、よくある10個の事例とその対処法について詳しく解説します。

  1. 勤務先に退職を拒否される
  2. 退職金や給与が支払われない
  3. 有給休暇を消化させてもらえない
  4. 勤務先から直接連絡が来る
  5. 懲戒解雇処分にされる
  6. 退職代行業者が非弁行為を行っていた
  7. 損害賠償を請求された
  8. 退職代行業者から追加費用を請求された
  9. 正式な依頼前なのにキャンセル料を請求された
  10. 退職ができなかった

1.勤務先に退職を拒否される

退職の意思を伝えても、勤務先がさまざまな理由をつけて退職を認めないケースがあります。人手不足や引き継ぎの問題を理由に、退職を先延ばしにされることもあるでしょう。

しかし、日本の法律では労働者に退職の自由が認められており、原則として会社に拒否する権利はありません。

2.退職金や給与が支払われない

退職時に発生するトラブルとして、退職金や未払い給与の未払いがあります。会社の経営状況が悪化している場合や、退職者への嫌がらせとして意図的に支払いを遅らせるケースもあります。

未払いがある場合は、必要に応じて労働基準監督署への相談や、弁護士を介しての法的手段も検討しましょう。

3.有給休暇を消化させてもらえない

退職前の有給休暇の消化を申し出ても、会社側が認めないケースがあります。

しかし、有給休暇の取得は労働者の権利であり、会社側に拒否する正当な理由がない限り、取得を認めるべきです。

こちらも必要に応じて労働基準監督署への相談や、弁護士を介しての法的手段を検討しましょう。弁護士を介して、金銭での精算を提案することも一つの解決策です。

4.勤務先から直接連絡が来る

退職代行サービスを利用しているにもかかわらず、勤務先から直接連絡が来るケースがあります。退職者との直接連絡は退職代行の意義を無視した行為であり、精神的なストレスの原因です。

勤務先から直接連絡が来る場合は個人で対応せず、利用した退職代行業者に対応を依頼しましょう。すべての連絡を退職代行業者経由で行うよう、改めて勤務先に要請することも可能です。

5.懲戒解雇処分にされる

退職を申し出たことで、逆に懲戒解雇処分を受けるケースがあります。しかし、これといったトラブルがない場合の懲戒解雇処分は不当な処分であり、労働者の権利を侵害する行為です。

必要に応じて、労働組合や弁護士への相談も検討してください。

6.退職代行業者が非弁行為を行っていた

退職代行業者の中には、弁護士資格がないにもかかわらず法律事務を行う「非弁行為」を行っているケースがあります。非弁行為は違法です。

非弁行為が疑われる場合は、即座に依頼を中止し、別の信頼できる業者や弁護士に相談することをおすすめします。また、弁護士会や消費者センターへの通報も検討しましょう。

7.損害賠償を請求された

退職によって会社に損害を与えたとして、損害賠償を請求されるケースがあります。しかし、正当な理由のない損害賠償請求は認められません。

損害賠償を請求される事態に備えて、退職理由や業務の引き継ぎ状況などを詳細に記録しておくことが大切です。退職代行業者と相談しながら、適切な対応を取りましょう。

8.退職代行業者から追加費用を請求された

契約時に合意した金額以外に、追加で費用を請求されるケースがあります。追加費用は事前の説明不足や、不透明な料金体系が原因となっていることが多いです。特に『25,000円~』といった最低料金のみが記載された広告や、『1万円〜5万円』などの幅がある料金表示には注意が必要です。

追加費用の請求には慎重に対応し、必要に応じて料金の内訳や追加業務の詳細について説明を求めましょう。

9.正式な依頼前なのにキャンセル料を請求された

退職代行サービスの利用を検討中に、正式な依頼をする前にもかかわらずキャンセル料を請求されるケースがあります。正式な依頼前のキャンセル料は多くの場合、不当な請求です。

事前の相談や見積もりの段階では、原則として料金は発生しません。請求には応じず、消費者センターなどに相談することをおすすめします。

10.退職ができなかった

最悪の場合、退職代行サービスを利用しても退職ができないケースがあります。主に退職代行業者の能力不足や、勤務先と退職代行業者の間で衝突が発生してしまった場合に起こりえます。

退職できない事態を避けるためにも、信頼できる業者を選ぶことが大切です。また、退職が難航した場合の対応策についても、事前に業者と相談しておくことがおすすめです。

トラブル回避のための退職代行業者の選び方とは

退職代行サービスのトラブルを避けるためには、信頼できる業者を選ぶことが必須です。以下4つのポイントを押さえて、慎重に業者を選びましょう。

  • どのような依頼内容まで対応できるのかを確認する
  • 未払いの給与や慰謝料の請求も考えているなら弁護士に依頼する
  • 料金設定が明確になっているかを確認する
  • 代表者の氏名や会社の連絡先が書いてあるか確認する

また、複数の業者を比較検討することで、より自分に合ったサービスを見つけられます。

どのような依頼内容まで対応できるのかを確認する

退職代行業者によって、対応できる内容は異なります。

自分のニーズに合った業者を選ぶために、どこまでの対応が可能なのかを事前に確認しましょう。また、対応可能な内容と料金についても確認することで、不要なサービスに料金を支払うことを避けられます。

未払いの給与や慰謝料の請求も考えているなら弁護士に依頼する

未払い給与や慰謝料の請求も考えている場合は、弁護士に直接依頼することをおすすめします。

弁護士は法的な知識と経験を持ち、交渉や請求に対応できるためです。また、訴訟に発展した場合でもスムーズに対応できる点もメリットです。

料金設定が明確になっているかを確認する

退職代行サービスを利用する際は、料金設定が明確になっているかどうかを必ず確認しましょう。基本料金だけでなく、オプションサービスの料金や、想定外の事態が発生した場合の追加料金についても事前に把握しておくことが大切です。

不透明な料金設定は、後々のトラブルの原因になります。料金に関して不明な点がある場合は、遠慮なく業者に質問をしてください。

代表者の氏名や会社の連絡先が書いてあるか確認する

信頼できる退職代行業者を選ぶうえで、代表者の氏名や会社の正式な連絡先が公開されているかどうかは重要なポイントです。退職代行業者の会社情報が明記されていない場合、業者の信頼性に疑問が生じます。

また、トラブルが発生した際の連絡手段としても必要です。Webサイトや契約書に、会社情報が明確に記載されているかを確認しましょう。

退職代行トラブル回避のための事前準備

退職代行サービスを利用する前に、トラブルを回避するための準備を入念に行うことが大切です。

まず、自分の退職理由を明確にし、できれば文書化しておきましょう。退職理由を文書化することで、退職理由の誤解を防ぎ、会社側からの責任転嫁を避けられるなど、退職時に生じるさまざまなトラブルの防止に繋がります。

また、未払い残業代や有給休暇の残日数など、労働条件に関する情報を整理したり、会社の就業規則や労働契約書をよく確認したりするなど、退職に関する規定を把握しておきましょう。

就業規則や労働契約書には、退職に関する規定が記載されていることが多いです。そのため、しっかりと内容を確認しておくことで、どのような手続きが求められるかを理解した上で、自分の権利を守りトラブルを回避することができます。

退職代行業者を選ぶ際は、複数の業者を比較検討し、サービス内容や料金体系、過去の実績などを慎重に確認することをおすすめします。また、業者との初回相談時には、自分の状況を詳しく説明し、想定されるリスクや対応策について十分に話し合っておくことも必要です。

さらに、退職後の生活や次の就職先についても計画を立てておくことで、精神的な不安を軽減し、冷静に退職プロセスを進められます。もしも、退職に精一杯な場合、退職代行サービスの中には、退職後の失業保険の申請サポートや転職サポートまで対応してくれるものもあります。状況によっては、そのようなサービスを利用するのも一つの選択肢です。

弁護士に退職代行を依頼するメリット

退職代行を弁護士に依頼することには、4つの重要なメリットがあります。以下では、その主なメリットについて詳しく解説します。

  • 法的な交渉が可能
  • 損害賠償請求をされた場合の対策にもなる
  • 残業代の請求も可能
  • 不当解雇をされた場合にも対応できる

それぞれ解説します。

法的な交渉が可能

弁護士に退職代行を依頼する1番のメリットは、退職に関連する法的な交渉を行える点です。

たとえば、以下のような法的な問題は、弁護士によってのみ対応が可能です。

  • 未払いの残業代の請求
  • 未払い賃金の請求
  • 職場でのパワハラやセクハラといった労働問題に関する交渉

弁護士は労働法に精通しているため、法律に基づいた適正な解決策を提案できるため、退職者は自分で交渉する負担を軽減できるだけでなく、複雑で専門的な法律問題にも適切に対処できるという安心感が得られます。

損害賠償請求をされた場合の対策にもなる

退職に際して、会社から不当な損害賠償請求をされた場合、弁護士に依頼していると、その場で迅速かつ適切な対応を行えます。

弁護士は、損害賠償請求の内容を詳細に精査し、法律に照らし合わせてその妥当性を判断できるためです。

たとえば、会社が主張する損害の発生過程や、その金額が実際の損害と一致しているかを検証し、法的根拠の有無を確認します。

また、請求が過剰である、法的に無効であると判断された場合には、すぐに適切な反論を行い、不当な請求を退けるための法的措置を講じます。

さらに、弁護士は交渉力も持ち合わせているため、会社側との直接的な交渉を通じて、不当な請求を撤回させたり、和解を成立させたりすることも可能です。

残業代の請求も可能

弁護士に退職代行を依頼する際、未払いの残業代請求を同時に行えます。

未払い残業代は、多くの労働者が直面する問題であり、正確に請求するには専門的な知識が必要です。

弁護士は労働法に精通しており、複雑な残業代の計算方法を理解しているため、正当な権利を守るための強力な味方となります。

未払い残業代を請求するには、まず労働時間の記録を詳細に確認し、どれくらいの時間が労働基準法で定められた労働時間を超えているかを把握します。

労働者が適切に記録を管理できていない場合でも、可能な限り証拠を集めて残業代請求の法的根拠を明確にし、会社に対して適切な補償を求める交渉を行うのです。

不当解雇をされた場合にも対応できる

会社側が退職ではなく解雇を主張してきた場合や、不当な理由での解雇を受けた場合、弁護士が介入すれば労働者の権利を守るための強力な対応が可能です。

現実には会社側が労働者の退職を強引に進めるために、不当な理由で解雇を主張するケースも少なくありません。

たとえば、労働者が正当な残業代請求やパワハラの報告を行ったことを理由に、報復的に解雇を言い渡されることも。

このような場合、弁護士は解雇の背景にある事実関係を調査し、不当な解雇であることを立証するための証拠を集めて訴訟手続を行います。

退職代行を利用する際の手順

退職代行サービスを利用する際の基本的な3ステップについて、以下で詳しく解説します。各ステップを理解することで、スムーズな退職プロセスを実現できるでしょう。

  1. 退職代行業者に依頼を行う
  2. 退職代行業者から勤務先に連絡を行う
  3. 退職届が受理されて退職

1、退職代行業者に依頼を行う

退職代行を利用する際には、まず選択した退職代行業者に正式な依頼を行います。

依頼の際には、自分の現在の状況や退職を希望する理由、退職時期、そして希望する退職の条件などを詳細に説明します。

依頼を進める際には、契約内容をしっかりと理解しましょう。契約内容は、契約書や依頼書、利用規約その他の方法で必ず明示されますので、退職代行業者の責任範囲や対応期限、利用者の義務等を必ず確認したうえで依頼しましょう。仮に、契約内容の明示が適切に行われない場合は、明示を求めるとともに、非弁業者である可能性も考慮して依頼するかどうかを再検討したほうがよいでしょう。

弁護士が提供するサービスで契約内容に同意した場合、着金確認後や、委任状や必要な書類にサインを行ったタイミングから、正式に手続きが開始されます。それぞれの退職代行業者によって手続きの開始のタイミングは異なるので、事前に確認しておきましょう。

2、退職代行業者から勤務先に連絡を行う

依頼が完了すると、退職代行業者は迅速に勤務先に連絡を取り、依頼者に代わって退職の手続きを進めます。まず退職の意思を正式に会社に伝えることからスタートです。

退職代行業者は、事前にあなたと確認した内容に基づき、希望する退職日や退職に伴う具体的な条件を会社側に明確に伝達します。

この間、依頼者が直接勤務先とやり取りをする必要はありません。

3、退職届が受理されて退職

退職日の確定に伴い、退職書類や業務の引き継ぎに関する詳細が決まります。

退職日が確定することで、未払いの給与、退職金、有給休暇の消化に関する具体的な手続きも進められるでしょう。

特に最終給与の精算は、残業代や通勤手当、その他の手当を含めた正確な金額が支払われるよう、退職代行業者が詳細に確認を行います。

また、退職金が支給される場合、その計算方法や支払い時期も会社側と調整され、確実に受け取れるように手配してくれるでしょう。

退職に際しては、給与明細や退職証明書など、必要な書類の受け取りも必要です。退職代行業者は、退職に関する書類が適切に発行され、依頼者の手元に確実に届くよう、会社と連絡を取り続けます。

また、退職後に必要となる社会保険や年金の手続きに関する案内があれば、内容を確認し、次のステップにスムーズに進めるようサポートします。

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まとめ

退職代行サービスは、直接退職を申し出にくい状況にある方にとって有用な手段ですが、利用にあたってはさまざまなトラブルのリスクがあります。

本記事で紹介した事例や対策を参考に、慎重に業者を選び、適切な準備を行いましょう。

特に、弁護士への依頼や事前の情報収集は、トラブル回避に効果が期待できます。

退職は人生の大きな転機です。退職代行サービスを利用する場合も、ご自身の権利を守りつつ、円滑に次のステップへ進むことができるよう、十分な注意と準備を心がけましょう。

困難な状況にあっても、退職代行のサポートを得ることで、より良い職場環境や人生の新たなステージへの扉を開けます。

監修:加藤滉樹|東京ブライト法律事務所

加藤滉樹|東京ブライト法律事務所

東京弁護士会所属弁護士 早稲田大学大学院法務研究科修了。
企業顧問業務を中心に、個人の交渉及び訴訟対応、刑事事件等も幅広く取り扱っています。