
退職代行サービスの利用を考えた際に、「退職届は提出するべきなのか」や「どのタイミングで提出すればよいのか」など、対応に迷ってしまいますよね。
この記事では、退職代行サービスを利用する場合でも退職届が必要な理由をはじめ、退職届の役割、退職届の作成方法、適切な提出タイミング、注意点などを詳しく解説します。
退職代行利用時でも退職届は提出すべき!
その理由は、退職届がない場合に会社側が退職希望者の退職意思を確認できないことや、退職の受理ができず手続きを進められない可能性があるからです。
退職代行サービスを通じて退職の意思を伝えても、会社側がその連絡を信用せず、退職手続きを進めるか判断ができない場合に、退職届が本人の意思の証明となります。
また、会社側が「聞いていない」などと拒否した場合の証拠としての役割も果たします。
なお、退職代行サービスを利用する場合でも、退職届をスタッフが代筆することは基本的にできません。
必ず自身で書く必要がありますが、一般的なテンプレートがあるため、それを見本にしながら作成できます。
退職届の提出は法律上必須?
法律上、退職の意思を「伝えるだけ」で効力は生じるため、退職届の提出は必須ではありません。
しかし多くの企業では、就業規則や社内ルールで退職届の提出が求められていることがあります。退職代行を利用する場合でも、このような社内規定に沿って正しい書類を提出しなければ、正式な退職手続きが滞る恐れがあるため、結果的にスムーズな退職の実現を妨げてしまうのです。
いつ提出するべき?
基本的には、退職代行業者が会社に連絡した後に退職届を提出します。
タイミングや方法については状況によって異なるため、初回の相談時に担当者へ確認しておくと良いでしょう。
手続きがスムーズに進むように、事前に退職届を用意したり、記載内容を確認したりすることをおすすめします。
そもそも退職届の役割とは
退職届とは、退職者本人が会社に対して退職を正式に通告するための書類です。
退職届の役割は、退職の意思を明確に示し、退職日を会社に伝えることです。また、退職の証拠として残るため、後々のトラブルを防ぐ役割も果たします。
退職届を提出後は、基本的に取り下げはできません。
退職願との違い
退職願は「退職したい」という希望を伝える書類であり、退職届は「退職します」という確定した意思を伝える書類です。
一般的に退職願は退職の意思表示の段階、退職届は退職日が決定した後に提出するものなので、提出のタイミングが異なるわけです。
また、退職願は取り下げが可能ですが、退職届は先述のとおり基本的に取り下げできないという違いもあります。
退職届の書き方
退職届を書く際は、以下のものを用意しましょう。
- 白い無地の便箋(B5もしくはA4サイズ)
- 黒のボールペンまたは万年筆
- 封筒(長形3号または長形4号)
- 印鑑
退職届の用紙はB5もしくはA4が望ましいとされており、それぞれの用紙に合う封筒サイズは長形4号、長形3号です。
退職届の本文の記入例
退職届の記入例を紹介します。各項目の解説もありますので、参考にしてください。

【各項目の説明】
①書き出し
私儀(わたくしぎ)と記載します。
②退職理由
自己都合退職の場合は「一身上の都合」と記載します。なお、会社都合の場合は具体的な退職理由(例:業績不振に伴う事業所閉鎖のため等)を記載します。
③退職日
上司との話し合いで決めた日付を記載します。西暦でも和暦でも問題ありません。
④文末
退職が確定してから提出するため「退職いたします」と記載します。
⑤届出年月日
提出する日付を記載します。西暦でも和暦でも問題ありません。
⑥所属部署、氏名
宛名より下の位置に所属と名前を記載して、名前の下に捺印します。シヤチハタはNGです。
⑦宛名
代表取締役社長など、最高執行責任者の役職と名前を記載します。敬称は殿とし、自分の名前よりも上に書きましょう。
退職届の封筒の記入例
退職届の封筒の書き方を紹介しますので、参考にしてください。

【ポイント】
封入
のりで閉じたあとに「〆」と書きます。
封筒の表面
「退職届」と記載します。
封筒の裏面
差出人欄に、自身の所属部署と名前を記載します。
退職届を提出する際の注意点
退職届の提出に関する注意点を解説します。
「代筆不可」退職届は原則自身で作成・提出する
退職代行サービスを利用する場合でも、退職届の作成と提出は通常、自分で行う必要があります。退職届は、法律上、退職者本人の意思表示が不可欠な書類となるためです。
ただし、弁護士が運営する退職代行業者を利用する場合は、弁護士法に基づき、委任状があれば退職届の代筆が可能です。これは、弁護士が職務上、依頼人の代理として法的文書を作成・提出する権限を持つためです。
退職届は取り下げができないため慎重に考える
冒頭でも触れたとおり、退職届は一度提出すると基本的に取り下げることができません。これは、退職届が正式な意思表示として扱われるためです。会社側も退職届を受理した時点で退職手続きを進めてしまうため、翻意しても元に戻すことは困難です。
安易な気持ちで提出すると、後悔する可能性があるので注意しましょう。
退職届を郵送で送る場合は内容証明郵便で送る
退職届を郵送する際は、内容証明郵便の利用を推奨します。内容証明郵便とは、郵便局が文書の内容を証明し、いつ、誰から、誰に、どのような内容の文書を送ったかを証明するサービスです。これを利用することで、退職届の送付日時や内容を明確に記録できます。
万が一、退職に関するトラブルが発生した場合でも、退職の意思表示を確実に行ったことを証明できるため、法的な保護を受けやすくなります。
もし内容証明便を利用しない場合でも、最低限、郵便物の配達状況を確認できるレターパックを利用するようにしましょう。
退職代行サービスの利用の流れ
退職代行サービスを利用する場合、一般的に以下のステップで進行します。

なお、退職代行業者によってサービス内容や対応範囲が異なるため、事前に十分な確認が必要です。
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退職代行サービスのメリット・デメリット
退職代行サービスを利用する主なメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット1:心理的ストレスを軽減してすみやかに退職できる
会社を辞める際は上司に退職の意向を伝え、会社と話し合いを進めることが一般的です。しかし、退職を引き留められたり、パワハラのような言動に悩まされたりするケースも少なくありません。
退職代行サービスを利用することで、このような心理的な負担を軽減できるため、大きなメリットと言えるでしょう。
メリット2:最短で退職できる
退職を申し出る場合、法律上は最短2週間で退職することが可能です。しかし、多くの会社では1か月~2か月前の予告が規定されており、自分で「法律に則って2週間で退職します」と伝えるのは難しいと感じる人も多いでしょう。
一方、退職代行サービスを利用すれば、希望を伝達してもらえるため最短で退職できるケースがほとんどです。
メリット3:退職を引き留められたり、理由を聞かれたりするのを避けられる
自ら会社に退職の意向を伝えて退職する場合は、引き止められたり、理由を聞かれたりするケースも少なくありません。詳しい退職理由を伝えても納得してもらえず、結局退職できない可能性もあるでしょう。
退職代行であれば、本人との直接的なコミュニケーションがない分、会社側も引き止めるチャンスや意欲が減り、高い確率で退職できます。
メリット4:弁護士に依頼をすることで未払いの給与や慰謝料請求もできる
弁護士による退職代行サービスに依頼することで、トラブル発生時に法律に基づいて対処してもらえたり、未払いの給与や慰謝料の請求をしてもらえたりもできます。
さらに会社側は弁護士から請求を受ければ、法的措置を意識し、未払給与の支払いをしてもらえる可能性が高まります。
デメリット1:費用がかかる
退職代行サービスを利用するデメリットは、費用が発生することです。3万円~5万円程度の料金がかかります。自分で退職の手続きをする場合には発生しません。
ただし、この費用は精神的な負担の軽減や円滑な退職を実現するための投資と考えられます。費用対効果を十分に検討したうえで、利用を決めることが大切です。
デメリット2:悪質な業者だと退職がうまくいかないこともある
退職代行サービスの市場が拡大する中、悪質な業者の存在も問題となっています。経験や専門知識が不足している業者や、法律を無視した強引な手法をとる業者を選んでしまうと、退職が適切に進まない可能性があります。
最悪の場合、会社との関係がさらに悪化したり、法的トラブルに巻き込まれたりするリスクも。また、個人情報の取り扱いが不適切な業者もあり、情報漏洩のリスクも懸念されます。
悪質な業者にあたるリスクを避けるためには、信頼できる業者を慎重に選ぶことが必要です。口コミや評判を確認し、実績のある業者を選択しましょう。
デメリット3:会社の人間との関係が悪化する不安がある
退職代行サービスを利用すると、会社の同僚や同じ所属の人達との関係が悪化する可能性があります。とくに、突然の退職通告や、直接のコミュニケーションを避けることで、上司や同僚に不快感を与える可能性があるので注意が必要です。
長年勤めた会社や良好な関係を築いていた職場の場合、退職代行サービスの利用が人間関係を損なう原因になるかもしれません。さらに、退職の理由や状況を直接説明する機会を失うことで、誤解や憶測を生む可能性もあります。
デメリットを抑えるためには、退職代行業者を通じて丁寧な説明や挨拶のメッセージを伝えるなどの配慮が有効です。また、仕事上の関係と割り切り、自分の人生を大切にする意識も時には必要です。
※こちらの記事もおすすめ:退職代行利用のデメリットとは?利用がおすすめの事例もご紹介!
退職代行サービスを利用した方がいいケース
基本的には自分で退職を伝えるのがベストですが、以下のような場合は退職代行サービスの利用を検討しても良いでしょう。
- 自分から退職を切り出しにくい
- 引き止められる可能性が高い
- 退職を1度拒否された
- ブラック企業に勤務している
- メンタルヘルスの問題を抱えている
退職代行サービスを利用する際の注意点
退職代行サービスを利用する際のとくに重要な2つの注意点について詳しく解説します。
退職代行サービスの選定は慎重に行う
退職代行サービスには多くの新興企業が参入しており、サービスの種類も多様化しています。しかし、中には悪質な業者も存在するため、選定には慎重さが求められます。
安心できる退職代行サービスを選ぶポイントとしては
- 運営主体が弁護士や労働組合であること
- 実績や口コミが豊富であること
- 料金体系が明確であること
などが挙げられます。無料相談を利用して、サービス内容や対応範囲をしっかり確認するようにしましょう。
退職代行サービス経由の依頼は認めないと言われる可能性がある
会社側から「退職代行サービス経由の依頼は認めない」と言われる可能性がありますが、気にする必要はありません。従業員には退職の自由があり、退職の意思表示方法を制限することはできません。
万が一、拒否されるなどのトラブルに発展した場合、弁護士や労働組合が運営する退職代行サービスを利用すれば、会社側と交渉をしてもらえます。一方、民間の退職代行サービスは「意思を伝達すること」に特化したサービスであることを理解しておきましょう。
退職代行サービスの運営元別の業務内容をまとめましたので、参考にしてください。
対応内容 | 民間企業 運営 | 労働組合 運営 | 弁護士 運営 |
退職意思の伝達 | 〇 | 〇 | 〇 |
退職日の交渉 | ー | 〇 | 〇 |
有給取得の交渉 | ー | 〇 | 〇 |
給与支払の交渉 | ー | 〇 | 〇 |
離職票等を請求 | ー | 〇 | 〇 |
裁判対応 | ー | ー | 〇 |
民間企業が労働組合と「提携」することで「交渉可能」としている退職代行サービスも増えていますが、非弁行為に該当する可能性があるとも言われています。ここについては現時点で見解が分かれているため、不安がある方は、「労働組合運営」か「弁護士運営」の退職代行サービスを利用すると安心です。
まとめ
退職代行サービスは、自分で退職を伝えにくい状況の人にとって有効な選択肢となります。利用の流れ、メリット・デメリット、適した利用ケース、注意点などを理解することが重要です。
特に、サービスの選定には慎重さが求められ、弁護士や労働組合が運営するサービスを選ぶことで、より安全に退職プロセスを進められる可能性が高くなります。しかし、可能であれば自分で退職を伝えることが望ましいことも忘れないでください。
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株式会社Amazia Link
LogsFix編集部
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