退職代行サービスは、「仕事を辞めたいけれど、自分では言い出せない」という人にとって、非常に便利なサービスです。しかし、すべてがスムーズに進むわけではなく、失敗するリスクやトラブルが発生するケースも少なくありません。また、ネットで紹介されている内容は、提供者側に有利な情報が強調されがちです。そのため、全てを鵜呑みにするのは避けましょう。
この記事では、退職代行サービスを利用する際のリスクやトラブル事例について解説し、安全に利用できるサービスを選ぶためのポイントを”客観的”に紹介します。ぜひ参考にしてください。
退職代行で「辞められない」は少ないが「辞め方」はさまざま
退職代行サービスを利用して「退職が認められない」というケースは、実際にはほとんど発生しません。
これは、日本の労働法制が労働者の権利を保護しているためです。退職の意思を示せば、原則として退職を認められるのが基本です。
ただし、「辞め方」にはさまざまなケースがあります。スムーズに辞められる場合もあれば、会社と些細なトラブルに発展し解決後に辞められるケース、退職が認められても損害賠償を請求されるケースなどもあります。
したがって、「100%の退職実績」などの表面的な数値に安心しすぎないよう注意しましょう。
退職代行サービスの失敗(トラブル)事例
先述したように、退職代行サービスを利用すれば、基本的に退職自体は認められます。しかし、サービスの利用にあたっては、「会社とのトラブル」または「退職代行サービスとのトラブル」として、以下のような失敗事例を把握しておきましょう。
【会社との主なトラブル】
- 即日退職ができず会社から連絡が来る
- 有給消化や残業代の交渉ができない
【退職代行サービスとの主なトラブル】
- 高額な追加料金を請求される
- 退職後に必要書類を送ってもらえない
これらの事例を知ることで、より注意してサービスを選択することができるでしょう。以下より詳しく解説します。
失敗事例1、即日退職ができなかった
退職代行サービスを利用しても、即日退職できないケースがあります。
民法では、期間の定めのない雇用契約の場合、原則として2週間前に退職の意向を伝える必要があると定められているため、基本的には退職代行サービスが退職の意向を伝えた翌日から最低2週間は勤務する必要があります。
その期間、有給休暇を利用したり欠勤にしたりすることで、実質的な「即日退職」を実現する方法がありますが、会社によっては拒否されてしまう場合もあります。
※こちらの記事もおすすめ:退職代行サービスなら「即日退職」できる!その理由や利用の流れを説明
失敗事例2、会社から連絡がきた
会社から直接連絡が来る可能性を考える利用者も多いでしょう。実際に、退職代行サービスが本人に直接連絡しないよう伝えたにもかかわらず、「会社から直接連絡が来た」という事例もあります。
連絡内容としては、意思(本人)確認や、引き継ぎ内容、私物の回収などについてが多いです。退職代行サービスを利用する多くの方は「一切の連絡を絶ちたい」と考えていると思いますが、完全に連絡を断ち切ることが難しい場合もあります。
ただし、連絡がきたからと言って応答する必要はありません。退職代行サービスの担当者に対応を依頼しましょう。
失敗事例3、有給消化や残業代・退職金の交渉ができない
退職代行サービスを利用する際、有給休暇の消化や未払いの残業代の請求がスムーズに進まないトラブルが発生する可能性があります。これは、退職代行サービスの多くが一般企業であり、法的な交渉権を持っていないことが原因です。
退職代行サービスの運営元が弁護士や労働組合でない場合、報酬を目的に交渉や請求などの「法律事務」を行うと、非弁行為に該当し違法となります。
そのため、民間企業の退職代行サービスができることは「退職の意思を伝えるだけ」であり、有給休暇の消化や未払い賃金、残業代などの請求を行うことはできません。
失敗事例4、高額な追加料金を請求される
退職代行サービスを利用する際、高額な追加料金を請求されるケースがあります。特に、他のサービスよりも極端に安い価格のものには注意しましょう。
当初予定されていた金額よりも多額のサービス料を請求されたり、サービスの質が悪かったりするおそれがあります。また、法的な対応が必要となった場合に、弁護士紹介という名目で高額な追加料金が必要になることもあります。
このようなトラブルを防ぐには、事前に料金システムや価格体系が明確な業者を選ぶことが重要です。また、打ち合わせの際に利用料金だけでなく、法的な対応が必要になった時の追加料金についても確認しておくことが大切です。
失敗事例5、退職後に必要書類を送ってもらえない
退職代行サービスを利用した後、必要な退職関連書類を適切に受け取れないケースがあります。例えば、源泉徴収票や雇用保険被保険者離職票など、今後の就職活動や各種手続きに必要な重要書類が、期待したタイミングで送られて来ないことがあります。
これらの書類は、次の就職先への提出や失業保険の申請など、退職後の生活に直結する重要な書類です。退職代行サービスとの連絡が途絶えたり、対応が遅れたりすることで、これらの書類の受け取りが大幅に遅れ、退職者の生活に支障をきたす可能性があります。
退職代行の利用による懲戒解雇は法的に無効
退職代行サービスを利用したことを理由とする懲戒解雇は、法的に無効であると考えられます。懲戒解雇は、社内の秩序を著しく乱した労働者に対するペナルティとして行われる最も重い処分です。しかし、日本の労働法制では労働者の権利が手厚く保護されており、安易な解雇は認められません。
退職代行サービスの利用自体は労働者の正当な権利行使であり、これを理由とした懲戒解雇は、よほどの悪質性がない限り違法となります。そのため、仮に会社が退職代行サービスの利用を理由に懲戒解雇を行っても、法的には無効と判断される可能性が高いのです。
退職代行の利用による損害賠償請求のリスクは低い
退職代行サービスを利用して退職した場合でも、会社から損害賠償を請求されるリスクは低いと言えます。民法上、損害賠償請求は会社の権利が侵害された場合に限られます。単に退職代行サービスを利用しただけでは、会社の権利侵害には該当しないため、損害賠償請求の根拠とはなりません。
ただし、例外的なケースも存在します。例えば、必要な引き継ぎをまったくせずに退職した結果、会社に具体的な損害が発生した場合などは、損害賠償請求の対象となる可能性があります。
このようなリスクを回避するためには、最低限の引き継ぎ資料を残しておくと良いでしょう。万が一、損害賠償請求を受けた場合は、弁護士に相談して適切な対応を取ることが重要です。
【トラブルを未然に防ぐ】安全な退職代行サービスを選ぶポイント
退職代行を利用する際は、安全で信頼できるサービスを選びたいですよね!
以下が安全な退職代行サービスを選ぶ際のポイントです。
- 弁護士や労働組合が運営するサービスか
- 料金体系が明確であるか
- 利用者の口コミや評判が良いか
- サービス内容が充実しているか
それぞれ解説します。
※こちらの記事もおすすめ:徹底比較!おすすめ退職代行サービス15選
弁護士や労働組合が運営するサービスか
退職代行サービスを選ぶ際、運営元を確認することは非常に重要です。弁護士運営や労働組合が運営するサービスには、「交渉が可能」という大きな特徴があります。
特に弁護士が直接対応してもらえる退職代行サービスであれば、非弁行為のリスクがなく、安心して利用できます。「顧問弁護士」がいるサービスは、実際に対応する担当者が弁護士ではないことが多いため、事前に確認が必要です。
※こちらの記事もおすすめ:退職代行は非弁行為に該当する?
民間企業が労働組合と「提携」することで「交渉可能」としている退職代行サービスも増えていますが、非弁行為に該当する可能性があるとも言われています。
ここについては現時点で見解が分かれているため、不安がある方は、「労働組合運営」か「弁護士運営」の退職代行サービスを利用するとより安心です。
料金体系が明確であるか
退職代行サービスを選ぶ際、料金体系の明確さは非常に重要です。不透明な料金システムは、後々のトラブルにつながる可能性があります。確認すべき点としては以下があります。
- 基本料金の明示
- 追加料金の有無とその内容
- 支払い方法と時期
- 返金保証の有無
契約前に「追加で費用が発生するケースはありますか?」など、一言確認をしてみましょう!
利用者の口コミや評判が良いか
退職代行サービスを選ぶ際、利用者の口コミや評判を確認することは非常に有効です。実際の利用者の声は、サービスの質や信頼性を判断するうえで貴重な情報源となります。
企業の公式サイトに掲載された口コミは、編集される可能性があるため、よりリアルな意見を知りたい場合はSNSやGoogleビジネスプロフィールなどの口コミを参考にすることをおすすめします。
確認したいポイントは以下になります。
- 退職成功率
- 対応の迅速さと丁寧さ
- 追加料金の有無
- 退職後のフォロー
ただし、口コミや評判は主観的な意見が含まれるため、複数の情報源を比較することが重要です。また、極端に悪い評判や良すぎる評判にも注意が必要です。
サービス内容が充実しているか
退職代行サービスを選ぶ際、サービス内容の充実度も重要な判断基準となります。充実したサービスとは、単に退職の意思を伝えるだけでなく、以下のような付加価値を提供するものを指します。
- 24時間対応
- 退職後の書類手続きサポート
- 有給休暇消化の交渉
- 未払い賃金や残業代の請求サポート
- 退職後のキャリア相談
特に、弁護士が所属する退職代行サービスであれば、退職に関する交渉や法的なトラブルへの対応など、幅広いサポートを受けられる可能性があります。自分のニーズに合ったサービスを選ぶことで、スムーズな退職を実現できます。
退職代行の利用で失敗しないための注意点
退職代行サービスの利用で失敗しないための注意点を解説します。
1、現状報告をする際は隠し事をしない
退職代行サービスを利用する際、現状報告時に隠し事をしないことが重要です。なぜなら、正確な情報提供が適切なサポートにつながるからです。
特に心がけるべきことは、労働環境や心身の状況を詳しく伝えることです。パワハラや体調不良、過重労働などの問題があれば報告しましょう。また、現在無断欠勤中であるなど、特殊な状況も隠さずに伝えることが大切です。
これらの情報を包み隠さず伝えることで、退職代行サービスが最適なサポート方法を提案してくれます。また、潜在的なリスクを事前に把握し、対策を講じることも可能になります。
2、あらかじめ引き継ぎ資料をまとめておく
退職代行サービスを利用する際、可能であれば引き継ぎ資料をあらかじめまとめておくことをおすすめします。これには、会社からの問い合わせや連絡を最小限に抑えられるというメリットがあります。
また、スムーズな業務の引き継ぎが可能になり、会社との良好な関係を維持しやすくなります。引き継ぎ資料には、担当業務の進捗状況や重要な連絡先、データの保存場所などを記載しておくと良いでしょう。
ただし、これは可能な範囲で行えば良く、無理して作成する必要はありません。心身の状況によっては難しい場合もあるでしょう。その場合は、退職代行サービスにその旨を伝え、アドバイスを求めることをおすすめします。
3、貸与物の返却や私物の回収を済ませておく
退職代行サービスを利用する際、可能であれば貸与物の返却や私物の回収を済ませておくことをおすすめします。これにより、会社とのやり取りを最小限に抑えられ、退職手続きをよりスムーズに進められます。また、退職後のトラブルを防止できるという利点もあります。
具体的には、会社から借りているパソコンや携帯電話などの機器、制服、社員証などを返却し、デスクに残している私物を持ち帰るのが望ましいでしょう。
ただし、これらが未回収でも大きな問題にはなりません。退職代行サービスを通じて後日対応することも可能です。心身の状況や時間的制約により返却や回収が難しい場合は、退職代行サービスにその旨を伝え、適切なアドバイスを求めることをおすすめします。
まとめ
退職代行サービスを利用する際は、安全性と信頼性を見極めることが重要です。適切なサービスを選択し、必要な準備を行うことで、スムーズな退職プロセスを実現できます。
退職代行サービスによる退職失敗のリスクは低く、法的にも保護されています。しかし、サービス選びには慎重さが求められます。明確な料金体系、専門家の在籍の有無、充実したサービス内容を確認し、利用者の評判も参考にしましょう。
また、正直な現状報告や引き継ぎ資料の準備など、自身でできる対策も重要です。これらの点に注意を払うことで、退職代行サービスを効果的に活用し、新たなキャリアへの一歩を踏み出すことができるでしょう。
株式会社Amazia Link
LogsFix編集部
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